相談例集

2019年5月「令和 元年」


新しい天皇陛下の即位に伴い、日本列島総祝いで記念すべき時を迎えました。新元号は、万葉集の「梅」をとらえた一文から採用されたことを、すでに皆さまもご存じのことと思います。よく比較される「桜」は日本的ですが、梅や桃は中国の背景を感じます。身近な食べ物としての梅ですが、一般では「梅干し」や「梅肉エキス」が知られます。漢方でも「烏梅(ウバイ)」と言って、梅の果実を薫蒸した物を処方の原料として使ったり、「梅核気」という病名は、のどに梅の種が詰まっているような違和感を例えたものです。ちなみに「桃」ですが中国では邪気を祓い不老長寿を与える植物として愛されています。「桃万頭」や「桃源郷」、「桃栗三年柿八年」など日常耳にされます。漢方では桃の種を「桃仁(トウニン)」と言い、例えば「桃核承気湯」という処方に入っており、女性がのぼせて便秘気味の方に使います。種はおなかの硬いしこりを取る作用を期待するのです。そして「桜」も使用されます。木の皮部分を「桜皮(オウヒ)」と言い、咳止めに使ったり、処方では皮膚の漢方薬「十味敗毒湯」の原料で使います。「松竹梅」「桃の節句」「桜吹雪」どれも日本人にはなじみのある言葉ですね。健康で平和な活力のある時代になりますように。

セオ薬局代表取締役 漢方薬・生薬認定薬剤師  瀬尾昭一郎