相談例集

2014年7月 当帰の花


夏の事だった。わが家の「当帰」が腰ほどの高さになり、白い小花が集まって、開いた傘のような姿をしてあたりを明るくしていた。生命の勢いを花に感じた。当帰はセリ科の植物で、特有のプーンとした芳香を持つ。「漢方のニオイ」と言われる独特の香りの一つだ。葉は濃緑色で、セリの葉に似て三つに分かれている。虫が付きやすく、煙でいぶして駆虫する話を聞いたことがある。当帰は漢方薬でよく使われる生薬の一つだ。病人に与えると健康に帰る、「当に帰る」といういわれがある。日本産の当帰は優れた品質を誇るが、生産農家が少なくなったのが悩みの種である。当帰を使った漢方薬に「当帰芍薬散」がある。六つの生薬から成り、煎じたり粉末にして服用する。古典には粉末をお酒で服用するよう指示がある。胃腸の負担を軽くし、吸収を高める効果がある。おもしろい方法だ。色白で比較的体力がなく、冷え症、貧血傾向の女性に主に用いられてる。安全性の高い漢方薬の一つで、妊婦の体調を整えたり、安産の目的でも服用される。近年では認知症で用いられた報告もあった。