相談例集

2017年12月 「正しい漢方薬の使用」 その3


私の薬局には毎年、薬学部の5年生が実務実習の一環として漢方薬の研修に来ます。処方と病態の対比もですが、薬剤師の職能として、気をつけなければならない生薬や、服用する方の体質などの観察等、総合的に教育をしています。「小柴胡湯」と「インターフェロン」の併用により「間質性肺炎」の副作用が起こった例、「甘草」の副作用の「偽アルドステロン症」、妊産婦への瀉下剤(例えば「大黄」)など、現代医学の目でも注意を促す必要があります。これらは薬剤師国家試験問題にも頻繁に出題されている項目の一つです。実習の中では、乾燥した生薬をかじってもらい、「味」を確かめてもらっています。漢方の味として、「酸(さん 酸っぱい味)」「苦(く 苦い味)」「甘(かん 甘い味)」「辛(しん 辛い味)」「鹹(かん 塩からい味)」の五味を説明の上、生薬がどの味か確かめるのです。これは生薬の各味(成分)が五臓と五腑に吸収され、薬効を発揮するからです。これに比べ化学薬品は、原材料を賦形剤でカサを増し、カプセルや錠剤、顆粒、あるいは砂糖で甘くしたり、香りをつけたりしてマスキングを施し、服用しやすい剤形に加工しています。漢方薬は逆にこれらの味を大事にしながら服用します。煎じ薬であれば、臭い・香りなども薬効の一つと言われています。食べ物と一緒ですよね。


セオ薬局 代表取締役 漢方薬・生薬認定薬剤師  瀬尾昭一郎