京都嵯峨小倉山二尊院の“あせるな おこるな いばるな くさるな おこたるな”は日常の反省として身にしみる身近な戒めの言葉です。落ち着かない、許せない、身の程知らず、知恵不足、なまけもの、などの似通った単語も浮かびます。いずれも心の状態をうまく言い表しています。漢方でも、心、心理状態を探りながら処方を考えることがよくあります。世間によくあるのは、家族、親と子、嫁と姑、財産問題、上司と部下、同級生同士、恋愛のもつれ、など身の上相談になりそうな背景から、「気」のトラブルが起こったり、「血」の病気を引き起こしたり、「水」による体調不良が起こったりします。漢方では、身体のバランスの崩れや偏りを考えます。一日は24時間でみな平等な時間です。そして、太陽の照る日中と月の出る夜は、季節によるずれはありますが、ほぼ半分づつです。偏ってもまた戻るのです。どちらか一方だけでは続かなくなっています。「気の病(やまい)」と書いて「病気」と言っています。そう、気の安定が大事です。人には思考、感情があるので気は微妙に変化し複雑ですが、気の安定は病の予防や治療に必要です。「心」の「安定」そして「安心」「健康」です。
セオ薬局代表取締役 漢方薬・生薬認定薬剤師 瀬尾昭一郎