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2018年2月 「正しい漢方薬の使用」 その5


漢方薬の選び方として特に「寒熱」を考えながら処方を選ぶことは大事な考え方の一つです。体が冷えて痛みがある人に「冷やす」生薬を与えると、合わないどころか、副作用で何らかのトラブルを起こすのは当たり前です。この逆で熱のあってほてる方に、温める物を与えるのもしかりです。ただし、人の体はちょっと複雑で、冷えのあるところには熱があり、熱のあるところには冷えが存在すると考えます。問題はどこが冷え、どこが熱を持っているかなのです。漢方薬が面白いのは、先ほど説明した「味」により、成分の行き場所が方向づけされるということです。酸は「筋膜(筋肉)や肝・胆」、苦は「血脈(血液)や心・小腸」、甘は「肌肉や胃・脾」、辛は「皮毛や肺・大腸」、鹹は「骨髄(骨)や腎・膀胱」といった具合です。現代の抗がん剤の分子標的薬に近いのかもしれません。それぞれの味の混合と分量によりそれぞれの臓器にそれぞれの成分が効果を発揮するという仕組みです。

セオ薬局 代表取締役 漢方薬・生薬認定薬剤師  瀬尾昭一郎