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ちょっと役に立つ話 「10月は乳がん月間」


毎年10月は乳がん月間です。乳がんと言えばフリーアナウンサー小林麻央さんの乳がんでお亡くなりになったニュースは記憶に新しい事です。麻央さんは闘病の様子を自身のブログで、多くの方に特に同じ乳がんの方の力になればと、亡くなる2日前まで発信していました。フォロワー数は258万人に達し、社会的な関心の高さも過去に類を見ないケースとなり、日本中の方が彼女の乳がん闘病を応援、闘病中の方からの共感を得たのではないかと思います。

日本人女性のがん罹患率トップの乳がん。その罹患率は20%超を占め、女性が最も注意しなくてはいけないがんという事になります。生涯で乳がんに罹患する確率は、女性で12人に1人と言われ、この罹患率は近年急激に増えています。その主な理由は食生活の欧米化や女性の社会進出が影響していると考えられています。女性ホルモンの一つ、エストロゲンにより乳がんは増殖しますが、月経中はエストロゲンが多く分泌されるため、体格が良く初潮が早くなった事が乳がん罹患者の若年化を進めている可能性があります。さらに妊娠出産が減少したこと(女性が生涯に経験する月経の回数が多くなっている)も、影響しているかもしれません。男性乳がんの罹患率は女性乳がんの1%程度ですが、女性と比べて予後が悪い事が知られています。

[乳がんとその症状]

乳房は主に、組織を形作るじん帯と脂肪、それらに守られた乳腺葉、乳頭へつながる乳管の4つの部分でできています。乳房という組織が乳管でつながれまとまったものが乳腺小葉、乳腺小葉が乳管でつながれて集まったものが乳腺葉です。乳腺葉は乳頭を中心に放射線状に15~20配置されており、出産に合わせて乳腺小葉で生産された乳汁(母乳)は、乳管を通って乳頭から外へ出ます。乳がんの多くは乳管から発生し、「乳管がん」と呼ばれ、小葉から発生する乳がんは「小葉がん」と呼ばれます。

[乳がんの症状]

①乳房のしこり

乳がんが進行すると腫瘍が大きくなり、注意深く触るとしこりがわかるようになります。ただし、しこりがあるからといって、全てが乳がんではなく、乳腺症、線維腺種、葉状腫瘍などでもしこりの症状が現れます。

②乳房のエクボなど皮膚の変化

乳がんが乳房の皮膚の近くに達すると、エクボのようなひきつれができたり、乳頭や乳輪部分に湿疹やただれができたり、時にはオレンジの皮のように皮膚がむくんだように赤くなったりします。乳頭の先から血の混じった分泌液がでることもあります。乳房のしこりがはっきりせず、乳房の皮膚が赤く、痛みや熱を持つ乳がんを「炎症性乳がん」と呼びます。炎症性乳がんのこのような特徴は、がん細胞が皮膚に近いリンパ管の中で増殖してリンパ管に炎症を引き起こしているためです。

③乳房周辺のリンパ節の腫れ

乳がんは乳房の近くにあるリンパ節である、脇の下のリンパ節(腋窩[えきか]リンパ節)や胸の前方中央を縦に構成する胸骨のそばのリンパ節(内胸リンパ節)や鎖骨上のリンパ節に転移しやすく、腋窩リンパ節が大きくなると、脇の下などにしこりができたり、リンパ液の流れがせき止められてしまうため、腕がむくんできたり、腕に向かう神経を圧迫して腕がしびれたりすることがあります。

[乳がんの発生要因]

乳がんの発生には女性ホルモンのエストロゲンが深くかかわっている事が知られており、体内のエストロゲン濃度が高い事、経口避妊薬(ピル)の使用や、閉経後の女性ホルモン補充療法など、体外から女性ホルモン追加により、リスクが高くなる可能性があるとされています。

[乳がんの発生リスクが上がる要因]

①初潮が早い事や閉経が遅い事は体がエストロゲンに暴露される期間が長い

②妊娠や出産経験のある女性に比べ、ない女性は発症リスクが高く、初産年齢が遅いほどリスクが高い。

③脂肪細胞でもエストロゲンがつくられるため、成人してからの肥満(特に、閉経後の肥満)

④飲酒習慣や喫煙

⑤良性乳腺疾患の既往、糖尿病

⑥家族歴の多い場合には遺伝性乳がんが疑われる(乳がん卵巣がん発症のうち10%と推測される)

[乳がんの腫瘍マーカー]

乳がんの腫瘍マーカーとしては、CA15-3、CEA、BCA225、NCC-ST-439、HER2などが臨床の現場で用いられています。これら腫瘍マーカーは早期乳がんの診断には陽性率が低く、がん発見のための検査としてはあまり有用ではありませんが、化学療法(抗がん剤)等の治療効果の判定には有用な事が多くなります。

CA15-3・・・乳がんに最も特異性があり、偽陽性率は低い傾向。

CEA・・・最も一般的腫瘍マーカー(大腸がん等の消化器がん、肺がん)、乳がんの陽性率は50%。

BCA225・・・乳がん特異性の高い腫瘍マーカー。

NCC-ST-439・・・消化器がんをはじめ各種がんにおいて増加する腫瘍マーカー。

HER2・・・乳がん症例の15~25%でHER2遺伝子の増幅とHER2蛋白(タンパク)の過剰発現が認 められる。

[乳がんに効果の高い「タキソール」は紅豆杉由来の抗がん剤]

化学療法や放射線療法は乳がんの治療において大きな効果がありますが、副作用があり、つらい思いに耐えて治療を受けなければなりませんし、最後まで治療が受けられず断念する方も多々あります。対して乳がんに最も使われている抗がん剤タキソールの原料となっている紅豆杉はがん細胞だけ狙い撃ちし、正常細胞は傷つけないという作用を持っており、安心して使って頂けます。と同時に抗がん剤はがん細胞を壊死(ネクローシス)させて細胞膜が破裂して内容物が飛び散り体にダメージを与えてしまうのに対して、紅豆杉はがん細胞の骨格にあたる「微小管」に結合してアポトーシス(自然死)へと誘導します。また、それ以外に紅豆杉ががん細胞に特殊なたんぱく質を発現させる事によってマクロファージが生きたがん細胞も食べる事がわかってきています。