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2014年5月 重みと光


小さいころから「ギリシャ神話」に興味を持っている。
今でもギリシャ神話に関する本を買いあさっている。
大河のゆったりした流れのように連綿と続く壮大なドラマは読みごたえがある。
小学四年の時、祖母からギリシャ神話集を一冊プレゼントされた。
その中の「パンドラの箱」を暗唱せよと父から言われた。
その時はわからなかったが、私が落ち着いて人前で話せるよう、はっきりと声が出せるようにするのが父の目的だった。
人前で話をする良い体験となった。

人前に立つといえば、小学五年生の学芸会で舞台に立った。
大学のクラブではドイツ語劇を演じた。
多くの人の前で注目を浴びる快感を覚えた。

パンドラは贈り物の箱を開けてしまう。
中から人間に対する、病気、戦争、しっと、災害、暴力などありとあらゆる悪が飛び出した。
人の欲深さはこわいと思った。
一つだけ底に残ったものがあった。「希望」だった。
その「希望」が言った。「私を忘れないでください」と。
形のない願いが私の心を打った。重みと光を感じた。
(南日本新聞夕刊連載「おもうこと」瀬尾昭一郎より抜粋)

セオ薬局 代表取締役 漢方薬・生薬認定薬剤師  瀬尾昭一郎