「鼻水がスッタンスッタン垂れっ困っちょっとぉ。治しっくいやったもんせ!」70代後半くらいの男性が見えました。中肉中背、便通もよく、特に持病もありません。散歩も欠かさず朝夕行っていました。キチキチした性格が見えました。漢方的な問診をした後、舌を診せてもらいました。「あれ?きれいな舌ですねぇ!?」年齢に似合わず薄くピンク色に輝かり、まるで“女学生のような”きれいな舌でした。漢方的には違和感が残りました。「とりあえず鼻水の漢方薬15日で様子を見て下さい。何か健康法で頑張っている事がありますか?」お尋ねしました。少し考えてから「そういえばここ2年かかさず、毎朝野菜を数種類ミキザーでつぶしてジュースを飲んじょっど。医者どんかぁ勧められっ、血がキレイになっち聞かせっもろたとぉ。血圧も下がったど!」ここまで聞いてピンときました。そう、舌の違和感の答えが解りました。生の野菜ジュースはカリウムが多くて冷えます。夏はまだしも、冬もコツコツと毎朝飲む事で、すっかり胃が冷えてしまい、玉突き式に肺系も冷え、肺の子分の鼻に影響、すなわち、鼻水が出だしたわけです。一方、カリウムをとることにより、血圧はさがりひと安心でした。意外な落とし穴が見つかり、納得されてお帰りになりました。
セオ薬局代表取締役 漢方薬・生薬認定薬剤師 瀬尾昭一郎
この夏、漢方相談をしながら、「面白い事だなぁー」と一人考えることがありました。結論だけお伝えすると、相談者のほとんどが、嗜好品の「ビール」と「アイスクリーム」で体調を崩し、症状がこじれていたことでした。夏の「暑い」中、「冷たい」もので内臓(口、食道、胃、肺、腸、子宮、膀胱など)を痛めていたのです。これだけの確率で愛飲(食)者がいるということは、これらの製造メーカーはさぞかし儲かっている事だろうと羨ましく思いました。日本全体ではお医者さんの出すお薬やドラッグストアの薬、健康食品など、治療に関連するものが売れ、可哀想なことに、これらの嗜好品が売れるほど、病人が増え、薬の種類も増え、しかも病態が長引いているという構造が見えてきます。「本人の勝手でしょう」というご意見もあるでしょうが、健康相談を仕事としている私にとって、病人が増えることは有難くもありますが、こういう病人を作りながらメーカーの売上が伸びることについては、ばかばかしくも感じます。似たような事では、他の嗜好品でもたくさんあるでしょう。性善説や性悪説にも通ずるところですが、社会は「風が吹けばおけ屋が儲かる」式の構造で仕事が成り立っているのだ!と一人納得しました。自身の教訓として一日でも早く良くなるために、本日も養生指導をしています。
セオ薬局代表取締役 漢方薬・生薬認定薬剤師 瀬尾昭一郎
ここ半年の事ですが、処方箋で医師が指示する「医療用漢方薬エキス製剤」が品薄になっています。大手のT社から始まり、K社O社K社S社と玉突き式に影響が出ています。医師がコロナ対策で新薬でなく漢方薬を一斉に使い出したせいではないかと言われています。最近の感染時の症状は「発熱」と「咽喉痛」が多いようです。これらの症状に対応する合理的な処方としては「麻黄」と「柴胡」と「石膏」が入った組み合わせの処方、「漢方薬K」と「漢方薬S」と「漢方薬K」の合方などを使用します。後遺症の「咳」や「鼻症状」に悩まされている方も多く、やはり漢方薬でやさしい効きめが好まれているようです。セオの店頭でも問い合わせが多くなりました。同時に抗原検査キットを求める方も増えています。キットは個人が購入の上5分程度で反応を見ますが、PCR検査は専門の施設に行き判明するのに半日程度の時間がかかるため、前者を希望する方が増えています。現在受験生の父兄が増えています。インフルエンザもですが、「流行性感冒」という立ち位置で特別でなくなることを期待しています。
セオ薬局代表取締役 漢方薬・生薬認定薬剤師 瀬尾昭一郎
朝礼を済ませた後、ジャージ姿の60代で高長身の男性が従業員と話しており、やがて「相談です」と呼ばれました。「運動をすると息苦しくなる」とのことでした。少し体重もあることがわかりました。右足半月板を痛めており、激しい運動は避けているとのことでしたが、テニスを若い時から続けているという事でした。血圧が高く、尿酸値がギリギリ。呼吸器専門では吸入剤をもらったが、「自分の訴えとちょっと違うがなぁ」と思いながら使用、いまいち効果も見られなかったとのことでした。どこをポイントにしたら良いのかちょっと考えましたが、まず循環器系を基準に年齢的な血液の汚れの「瘀血」を改善する漢方薬を選択しました。日常では定年後あまり運動をしていないこともわかり、まず、「体重をもう少し落とすこと、毎日歩くこと」をお願いしました。「急な運動は呼吸器や心臓に負担がかかるので、漢方薬を朝昼晩飲みながら歩くことから始めましょう」と説明したところ、「私もそう思います」と同意してくださいました。スポーツをやっていたこともあり、「将来もう少し馬力が出たら、しっかり運動を行い、アミノ酸の良い栄養剤があるので合わせて服用するともっと良くなりますよ!」と添えました。
セオ薬局代表取締役 漢方薬・生薬認定薬剤師 瀬尾昭一郎
Sさんは長年膠原病でお付き合いしています。勿論かかりつけのお医者さんがいらしてステロイドを中心にいろいろのお薬を処方されています。数年前の話ですが、新型コロナウイルスのワクチンを打つことになり、医師からも基礎疾患者としての感染による不安を考え、確かF製薬のワクチンだったと思いますが打たれました。数日腕の痛みと発熱が続き通常は元に戻るはずでした。しかし、なかなか体のだるさが取れず、相談に見えました。寝つきも悪く、よく夢を見るとのことでした。持病の悪化はなかったので、体力回復の為、漢方薬と牛黄入り人参製剤を飲んでもらうことにしました。一週間ほどしてお電話があり、「体調も良くなり、以前より元気になったみたいです」と溌剌としたお声でした。ワクチンは定期的に打つ必要があるので、今のうち体力をつけておくことですよとお伝えしました。最近はかぜ、インフルエンザ、コロナ等の後遺症で咳が治らない方が多いようです。やはり漢方薬で体力をつけながら咳を治していくのがおすすめです。
セオ薬局代表取締役 漢方薬・生薬認定薬剤師 瀬尾昭一郎
お電話があり、当日は女の子と母親と二人みえました。ここ半年、眠りが浅くすぐ目が覚めるとの訴えでした。体もだるく気力がなえることが多いようでした。医師から漢方薬と睡眠藥をもらっていました。妥当な処方とは思いましたが、効かないとの返事でした。成長期の為あまり化学薬品は飲ませたくないとのこと。数カ月前には風邪をこじらせ、咳がなかなかおさまらず、セオの「養肺湯」を差し上げとりあえず落ち着いていました。お薬手帳を拝見したところ、眼科や皮膚科、内科といろいろお世話になっていることが分かりました。お母様と変わらないくらいの体格で、軽く日焼けし、見た目は健康優良児の様です。さて、よくよく観察してみると目の白い部分が、うっすら「青く」見えました。「ははーん冷えだなぁ~」と直感しました。それから一時間ほど普段の生活の様子を根掘り葉掘り聞きだしたところ、案の定「アイスクリーム」が出てきました。最近の相談の傾向ですが、冷蔵庫や冷凍庫で冷え切ったものをすぐ口に入れ、食べたり、飲むんだりするケースが非常に多く、胃腸を急に、そして長く、冷やした結果、体の不調を訴える方が多いようです。今回はまず、胃腸を暖める漢方薬、天然アミノ酸製剤を差し上げ様子を見ることにしました。若いので回復は早いと思います。
セオ薬局代表取締役 漢方薬・生薬認定薬剤師 瀬尾昭一郎
“ニンジン ”と聞くと、まず、オレンジ色で馬が好物の野菜、セリ科のニンジンを思い浮かべる方が多いかもしれません。一方、ウコギ科の「朝鮮人参」を思い浮かべた方は健康への知識が深い方かもしれません。今回は後者の「人参」の話です。名称がまぎらわしいのですが、朝鮮人参の他に「高麗人参」、「薬用人参」、「オタネニンジンン」など、使用の歴史に沿って色々の名前がついています。国内では初代徳川家康、八代将軍吉宗などが人参の普及に関係しています。人参は栽培年数により一年根から六年根を目安としますが、五~六年根以上が高級品質とされています。一~三年根は中枢の働きを抑えるディオール系成分が多く、五~六年根ではトリオール系という元気をつけたり長生きに役立つ成分が多くなっています。一~三年が子供の人参、五~六年が大人の人参というイメージでしょうか。生薬の種類として、とれたての生の人参を「水参(すいじん)」、水参をそのまま乾燥したものを「白参(はくじん)」、水参を蒸して飴色状になったものを「紅参(こうじん)」と呼んでいます。紅参は白参に含まれる「マロン酸ギンセノサイド」という血圧を上げやすい成分が蒸して除かれており、血圧を気にされる方は紅参をオススメします。「偽人参(ぎにんじん)」もたまに見かけます。キキョウ、トウキ、ヒュウガトウキなどは根がかなり似た形態をしています。それぞれは目的の薬効がありますが、違う植物ですので鑑別が必要です。ここで「人参の七つの効きめ」をご紹介します。補気救(ほききゅう)脱(だつ)、益(えっ)血(けつ)復脈(ふくみゃく)、養(よう)心(じん)安神(あんしん)、生津止渇(せいしんしかつ)、補肺定喘(ほはいていぜん)、健脾止瀉(けんぴししゃ)、托毒合(たくどくがっ)瘡(そう)、以上。何となく意味が解ると思います。漢方では人参単品を用いた「独参(どくじん)湯(とう)」という処方もありますが、通常は数種を混合した処方で使用されています。代表的な漢方薬としては人参(にんじん)湯(とう)、小柴(しょうさい)胡(こ)湯(とう)、補中(ほちゅう)益(えっ)気(き)湯(とう)など、血行を良くしながら滋養強壮、体力強化を目的に使用されています。
セオ薬局代表取締役 漢方薬・生薬認定薬剤師 瀬尾昭一郎