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2013年11月 黄門さまの印籠


「この紋どころが目に入らぬか!」水戸黄門の名ぜりふである。
あのときの印籠の中身は何だろうか?
お芝居は虚構でもあの印籠の中身はうそではない。架空の薬ではない。
「牛黄(ごおう)」という名の漢方薬で、牛の胆石から作られた動物系生薬である。
牛黄はいろいろな病の予防や治療に用いられ、市販のドリンクやカプセル、錠剤、丸剤にもよく利用されている。
血流を良くする特性を生かし、認知症への応用も研究されている。

六十代の男性が、医師から長くは生きられないと言われた。
「長生きの薬はないだろうか」との相談に、牛黄製剤をすすめた。
本人の望み通り八十九歳まで長生きし、天寿を全うした。
数度の脳血栓で倒れた母親のことで娘さんが相談に来た。
これまた牛黄製剤が有効に作用したのか、それから二十年以上病床ではあるが、今でもお元気だ。
肝硬変であきらめていた学校の先生も牛黄製剤を服用した。
十年たった。力のなかった目がいきいきとし、土気色だった顔に赤みがさした。
(南日本新聞夕刊連載「思うこと」瀬尾昭一郎より抜粋)

セオ薬局 代表取締役 漢方薬・生薬認定薬剤師 瀬尾昭一郎