相談例集

その他

2010年11月 薬草の集いオータムH22.10.17

秋晴れの空気が澄んだ日曜日、バス1台の応募者と、スタッフの薬務課、薬剤師会"薬草同好会"のメンバーが「自然薬草の森」に集合。一行は二手に分かれ、"薬草教室"講義組と"園内徒歩散策"組で行動しました。私は午前、午後ともに後者の係でした。正門入り口から少しスロープを下ると「秋の七草」があります。「萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 女郎花 また 藤袴 朝 の花 * / 山上憶良」アサガオはキキョウの説が有力、フジバカマは絶滅危惧種、など物語を話しながら「歴史見本園」へ。薩摩藩は三つの薬草園を造っています。「ウコンとガジュツはどう違うの?」「中将湯のトウキが入っている?」など質問の嵐。中断しながらも楽しい案内でした。この薬草の森は昭和59年、昭和天皇のご行幸を賜り、「チクセツニンジン」や「ミシマサイコ」などご高覧いただいています。帰路、真赤な"カラスウリ"の実が目にとまり、数個持ち帰りました。種子が"打ち出の小づち"の形をしており、財布に入れるとお金がたまるとか・・・。天高く馬肥ゆる秋、屋外でいただいたお弁当がおいしいでした。

* 萩 はぎ 、 尾花 おばな(ススキ) 、葛 くず 、 瞿麦 ナデシコ 、女郎花 オミナエシ 、 藤袴 フジバカマ 、朝 アサガオ

 

Iさんと金の玉

7月に米寿を迎えられたI さん。色白でシミひとつない美人です。「今元気なのはセオ薬局さんのお陰です。」と有難いお言葉。30年程のお付き合いになるでしょうか?最初は不眠と自律神経失調の訴えで、漢方薬を服用されていました。しばらくはご夫婦でお越しのなっていましたが、ご主人が脳梗塞をされ、だんだんと自宅での世話(老々介護)が主になり、負担となりました。ご主人におすすめしていた、「金の玉」を"私の体の方が大切だから!!"と、ご自分用に毎日服用しだしてから、気力・体力、回復されました。ある日、顔半分を紫色にはらしてご来店されました。急いだ為、玄関で転んだ様です。早速、打ち身の漢方を処方しました。1週間後再来店。びっくりした事に、顔のアザがすっかり消えているではないですか!よくよく考えてみたところ「金の玉」ではないかと結論しました。毛細血管の流れが良くなり、うっ血がとれ、早く細胞が回復したものと思われます。本日は娘さんとご来店。夏の疲れのご相談でした。

 

2011年11月 大病を乗り越えて

Sさんは自分に厳しく他人に優しい思いやりあふれる女性です。平成10年、足のつりと膝痛で漢方薬をお求めでした。血圧が高く降圧剤も服用されていました。平成11年、検査で副腎の腫れを指摘される。自律神経症状があり漢方薬を処方しました。平成12年、副腎のホルモンが出過ぎるとのことで手術をすすめられる。しばらく漢方薬で調整していましたが、3年後手術に踏み切りました。術前、術後も漢方薬とアミノ酸製剤を継続されました。平成16年帯状疱疹、疲れがあったのでしょう。平成18年夏、ふら~として道路に座り込む。血圧が下がり過ぎたのか?病院から強めの降圧剤が処方され、現在も服用中です。大手術を乗り越え、あっという間に"傘寿"を迎えられました。「何でそんなに元気なの?」とよく言われるそうです。「お蔭様で」と控えめなご返事。時々関節痛や鼻水の漢方薬を服用しながら、アミノ酸製剤、クマザサエキス製剤、牛黄製剤を忘れずに服用されています。本日もお友達のNさんと仲良くご来店。店がパッと明るくなります。

 

2011年12月 努力で健康を維持しているご婦人

Kさんは小柄でやせ型の80代です。若い時は学校の先生をされていました。セオ薬局とのお付き合いは60代からになります。いつもK町からJRでお越しでしたが、最近はご高齢の為、お電話でのご注文になっています。耳が遠い以外は現在も体調が良く、ついつい長居相談電話となりますが、人一倍健康に気を配っておられます。最初は慢性胃腸炎の漢方薬をお求めでした。平成11年、めまいとふらつきがあるとのことで、漢方薬を変更しました。この頃(70代)からいろいろ体に投資されています。アミノ酸製剤、クマザサ製剤、薬用人参製剤、ビタミンE製剤、牛黄製剤、等を今も継続しています。平成20年1月矩生脈の相談があり、医師に診てもらったところ、心臓が4.5秒止まることが判明し、急遽、ペースメーカーを入れる手術を行いました。退院後は疲れやめまいが落ち着いた様でした。つい先日、健康雑誌に目を通していたところ、川柳コーナーにKさんの句がありました。「節電は経験ずみの戦中派」なるほど!

 

2012年3月 膝の痛みがとれ、シミまでとれたご婦人

「膝痛」で久々ご来店のTさんはもう80代になられたとか。寒くなり、特に明けがた膝がうずくとのこと病院の循環器から血圧、不整脈、血液サラサラの薬が出ており、飲み合わせを考えながら、漢方薬と無臭ニンニク製剤を差し上げました。3日後「夜中、頻脈で気分が悪かった。」と漢方薬を返品。考えた末、代わりに、肝・心・腎の血液を良くする「カキ肉エキス製剤」を差し上げました。これがぴったり合ったのか、3ケ月後「すっかり痛みがなくなった。」とご報告。原因は「冷え」から来る血行不良の様でした。ところが以前からむくんでいた足のはれが急にひどくなり、利尿を考え、「霊芝製剤」を差し上げたところ、また頻脈で中止。敏感なお体にびっくりしました。病院の検査では異常なしでしたが、気になったので、知り合いの医師に紹介したところ、原因らしい指摘がありました。まだ先は見えませんが、痛みがとれた事に加え、顔や手のシミも消えたと喜んでおられました。肝臓機能が良くなった証拠です。

*その後、この方は"原因らしいところ"の処置を行ったところ、"象の足"のようにむくんでいたのがシュッとキレイに元の足の状態に治り、非常に感謝されました。医師の診かたでこんなに違うんだとつくづく思いました。「飲んでて良かったから」と、「カキ肉エキス製剤」と「無臭ニンニク製剤」は今もお続けです。

2012年5月 「抑肝散」と「牛黄」が良かった例 

「娘の調子が良かったので、家内にも飲ませていいだろうか?」梅の花がほころぶ頃、Tさんからお電話がありました。奥様が"統合失調症"のためご入院。注射後、頭が下がったままで首が石のように固く、目に力が入らず無表情で、会話もできない状態でした。"緊張を和らげる漢方薬"と微量ミネラルをたっぷり含む「天然カキ肉エキス製剤」を差し上げましたが、病院の目を盗んで服用させる必要がありました。思慮の上、食パンにはさみ込んで食べる(服用)方法を実践。見舞い時のタイミングしかない為、我慢しながらの作戦でした。途中、「牛黄製剤」の併用を始めると、意外に早く効果が現れ、「首のこりがほぐれて頭が持ち上がるようになった!」とご主人からお喜びの電話があり、3週間ほどで退院されました。春の陽気もあり、期待通りの回復が難しい時季ですが、初期より6~7割は良くなっているとのご返事でした。何と言ってもご主人の献身的な愛が奥様の回復力を高めてくれたのでしょう。

 

2012年6月 不登校とキツネツキ

5月の連休中、40代のお母様が思いつめた顔で相談にみえました。高校の娘さんが不登校になり困り果てているとのことでした。低血圧、低体温で、朝は目が覚めても起きられない。1週間は便秘、ガスが学校で頻繁に出るが、家では出ない。ニオイが恥ずかしい。心療内科の薬は飲みたない。サプリメント5~6種類などなど・・。お母様の目が赤くなり話が中断。私も同年代の子供がいるので、人事とは思えませんでした。ふと、"キツネツキ"の漢方を思い出しました。"何かにとりつかれた様に、精神状態が不安定な人"に用いる処方です。これに、"自律神経"を調え、朝と夜のめりはりをつける薬用人参製剤の錠剤と、念のため、"気"の発散を助ける牛黄製剤を差し上げて様子を見ることにしました。2週間後、お母様がご来店。「お陰さまで学校に行っています。朝はパッと起きるようになり、周りの目をあまり気にしなくなりました。」と明るい声でした。短期間の回復に私も喜びましたが、しばらく1日のリズムを大事にし、登校する事を目標とするようお願いしました。

 

2012年8月 「お客様勉強会」へのお誘い

セオ薬局はお蔭さまで来年60周年を迎えます。ひとえに支えて下さったお客様や患者様、ご先輩方に御礼申し上げます。日頃の感謝の気持ちを込め、企画の1つとして「お客様健康勉強会」を昨年に引き続いて今年も毎月開催しております。5月が天然アミノ散製剤「レバコール」の話、同月「薬草の森散歩会」、6月が天然クマザサエキス製剤「ササヘルス」の話、7月が敏感肌用化粧水「アクル」の話を終了しています。生の声が届く広さの会場で、メーカーの担当者とお客様が直接触れ合う機会を作る事を考えました。普段、担当者は私どもと話をしても、お客様と直接の機会がないからです。商品の有効性や安全性、専門性は当然ながら、担当者の人柄や考え方に触れたり、質問に応じてもらう事で、より一層商品に愛着をと思っています。今年の予定は11月まで組んでありますので、お気軽にお問い合わせください。

 

2012年9月 私の体験パート3

ちょうど東日本大震災の時、テレビ放映で動揺した為か、血圧が上昇(160~110)、脈が早く動悸、結滞(脈が飛ぶ期外収縮)が続き来ました。後頭部が重く固く感じ、不快感がありました。思いきって専門医の診察を受け、降圧剤(カルシウム拮抗剤)を服用。1週間で血圧も下がりひと安心でしたが、脈が1分間に80位打つので熟考の末、煎じる漢方薬を服用しました。1週間もすると脈拍が60台までスーと落ち動悸も楽になりました。そのうち血圧も安定してきたので降圧剤は自分で止めました。冬は少々高めなので今後注意が必要ですが・・。その後も結滞が治まらないので、知り合いの医師に相談したところ、「柴○△」をすすめられ、顆粒でしたが素直に試すことにしました。2ケ月位たった頃でしょうか?1分間に7~8回あった脈のみだれがほとんどなくなり、アルコール、疲れ、食後を除いては気になる事が少なくなりました。へその横に強く感じた拍動もなくなり、気分もだいぶ楽になりました。血圧は時々高くなりますが、130~80台で今のところ安定しています。

 

2012年10月 オスキナフクハ(秋の七草)

"秋の野に 咲きたる花を指(および)折り かきかぞふれば 七種(ななくさ)の花""芽子(はぎ)の花 尾花(おばな) 葛花(くずばな) 瞿麦(なでしこ)の花 女郎花(おみなえし)また藤袴(ふじばかま) 朝顔(あさがお)の花"有名な万葉集の山上憶良の句です。ハギはマメ科で日本全国目にされます。尾花はススキ。葛(くず)もマメ科で漢方の「葛根湯」の主薬です。根のデンプンを精製しクズ菓子が作られます。"ナデシコジャパン"が有名ですが、「撫し子」

の字もあり、可憐な花のかわいさが想像できます。オミナエシは「敗醤根(はいしょうこん)」と言って、根が醤油の腐ったようなニオイがします。オトコエシもあり、前者が黄色、後者が白い花が咲きます。フジバカマはレッドデータブックリストに入り、絶滅危惧植物です。葉を乾燥させると、クマリンを含んだ甘い香りがします。昔、武士の嗜み(たしなみ)として使用されたらしいです。アサガオは現代のものではなく、「桔梗」が有力です。他、ムクゲ、ヒルガオ説もあり話題となります。秋の七草の覚え方は題字の通りです。澄んだ空気の中で散策しませんか?セオ薬局ではご希望により「薬草の森 遠足会」を行っています。

 

 

2013年2月 お蔭様でお陰様で

思いがけなく昨年秋、「薬事功労者」の知事表彰を授かりました。県庁にて保険福祉部長と同薬務課長から祝辞を賜わり、賞状と楯、記念品をいただきました。ふと振り返ると、大学卒業後製薬メーカーに2年、鹿児島に戻ってちょうど30年、薬草の森のお手伝いをして約30年、薬学6年制に伴う薬学生受け入れを15年、鹿児島市薬剤師会の理事を12年、長い道を歩んできました。日常の活動が評価された事に感謝し、益々薬剤師業務に専念奉仕する決意を新たにしました。不思議なご縁で、本年セオ薬局は創業60周年を迎えます。ひとえにお客様とご支援くださった方々に御礼申し上げます。初代で会長の瀬尾昭は元気に現役として86歳の坂を登っております。中学時代に発病した「WPW症候群」という特殊な心臓病を長年かかえ、自分の体を守る「漢方」の世界に飛び込み、学び助けられながら今日に至っています。今後もセオ薬局では「健康は創るもの」という考えを基本理念にアドバイスを続けて参ります。「そうだ!セオ薬局に相談しよう!!」と思い出していただければ幸いです。

 

2013年5月 何かイイコト薬用人参

「困った時はセオ薬局さんに行きなさい!」牛黄の愛飲者だったお母様からYさんはよく言われていたそうです。体が弱かった事もあり、セオ薬局の現会長から「これを10年続けて飲みなさい。きっといい事があるから。」と当時言われ、もう20年以上薬用人参製剤をお続けになっています。「何かイイコトありましたか?」お尋ねしたところ、「フフッ!?」と笑みを浮かべ視線は天井へ。「ありましたヨォ~」「教えて下さい!!」「実は同窓会で・・・」この一言でピンと来ました。「自分1人だけ若かったのヨ!!」と目を細めて嬉しそうに小声でお答え下さいました。薬用人参は"人参七効"と言って、7つの薬能があると言われます。元気を補い疲れを早くとる、血を造り脈の力を回復、精神安定、体液の調整、肺を補い咳を止める、胃腸を丈夫にして下痢を止める、体内の毒を出して傷を治す、等です。ガンでは補助薬として服用することで、不思議に痛みが和らいだり、治療成績が向上する時が良くあります。

2013年10月 薬草の森へどうぞ

「天高く馬肥ゆる秋」空気の澄んだ季節になりました。2020年オリンピックも東京に決定され、ぜひ観に行きたいと思った方は多かったと思います。二度同じ首都で開催されるのは希有な事です。「おもてなし」をキーワードに日本人のきめの細かさを再認識する

ニュースでした。セオ薬局真砂本町本店ビルが建ったのも前オリンピックの年で、当時の鴨池空港でYS11から聖火が運ばれる様子を見に行った記憶があります。今月の「セオ薬局創業60周年記念イベント」として「薬草の森遠足会」を開催します。「薬草の森」は現在の溝辺空港から車で20分ほど走ったところにあります。昭和59年鹿児島県が県民の健康増進の目的で造成したもので、セオ薬局会長瀬尾昭が中心になり10年の歳月をかけオープンしました。現在も薬務課と薬剤師会で運営会議を毎月行っています。「自分

の健康は自分で作る」という考えの延長線に身近な薬草とのふれあいを考え実現したものです。「秋の七草」はご存知ですか?薬草の森へ"秋"を呼吸しに行きましょう。

 

2013年11月 黄門さまの印籠

「この紋どころが目に入らぬか!」水戸黄門の名ぜりふである。あのときの印籠の中身は何だろうか?お芝居は虚構でもあの印籠の中身はうそではない。架空の薬ではない。「牛黄(ごおう)」という名の漢方薬で、牛の胆石から作られた動物系生薬である。牛黄はいろいろな病の予防や治療に用いられ、市販のドリンクやカプセル、錠剤、丸剤にもよく利用されている。血流を良くする特性を生かし、認知症への応用も研究されている。六十代の男性が、医師から長くは生きられないと言われた。「長生きの薬はないだろうか」との相談に、牛黄製剤をすすめた。本人の望み通り八十九歳まで長生きし、天寿を全うした。数度の脳血栓で倒れた母親のことで娘さんが相談に来た。これまた牛黄製剤が有効に作用したのか、それから二十年以上病床ではあるが、今でもお元気だ。肝硬変であきらめていた学校の先生も牛黄製剤を服用した。十年たった。力のなかった目がいきいきとし、土気色だった顔に赤みがさした。(南日本新聞夕刊連載「思うこと」瀬尾昭一郎より抜粋)

2013年12月 おけつ

健康維持や病気治療には「血液サラサラ」「血管しなやか」がポイントだ。逆に、血液の流れが悪くなり滞った状態を、漢方では"瘀血(おけつ)"という。瘀血は日常の生活習慣やストレスなどに起因するものが多い。高血圧症、動脈硬化症、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、がん、糖尿病、痛風、肝炎、腎炎、アレルギー疾患、膠原病、リウマチなど、すべて瘀血に関係がある。ストレスがかかると、血管は収縮し、血液の流れが悪くなる。数年前のこと、私にこんなことがあった。なぜか突然息苦しくて目が覚めた。不整脈と動悸に気がついた。そのころ、仕事の関係でストレスがあった。肩がこり、血圧が上がったのか頭痛がした。瘀血と判断し、漢方薬を飲んだ。中国で国家プロジェクトの一環として、比較的新しく開発された処方だ。頭痛や頭重、肩コリやめまい、動悸などは瘀血のサイン。漢方の得意とする分野である。もちろん瘀血にならないためには偏った食事に注意したり、運動を日ごろから心がけるのも大切だ。     (南日本新聞夕刊連載「思うこと」瀬尾昭一郎より抜粋)

2014年2月 病は「気」から

「気」という文字を使った単語は多い。勇気、元気、意気、殺気、湿気、気分、等々。では、気とは何か?血液や水分は目で見えるが、気は見ることができない。人はいざというとき、常識では考えられない力を出す時がある。俗に言う「火事場のばか力」である。これは気が起こす不思議が、形として現れた一瞬であろう。昔から「病は気から」と言われる。男の人がのどが詰まった感じがして、検査をしたがどこも悪くないと言う。これは気うつの状態で「梅核気」と言う。梅の種でのどがふさがった感じがする病だ。小学生の男の子が母親と二人で来た。男の子は目をシパシパさせて落ち着かない。一種のチック症状だ。気のよどみである。親に何か訴えたいが、言い出せない感じにとれた。同時にオネショも気のよどみである。気は目に見えないが、心と体を結ぶ大事な働きをする。自然の中から生まれた漢方薬は、この気の流れをうまく調節するのにすぐれている。自然の力の知恵である。

 

2014年3月 未病

病気の診断が医療機器の進歩に従い正確度を増してきた。それにつれて、患者は検査結果に一喜一憂するようになった。自覚症状があっても、検査結果に異常のない人もいる。心配ない結果でもつい神経質になってしまう。体を治す目的の薬の服用が、検査結果を上げ下げする目的にすり替わっているように感じるのは、私だけだろうか?「先生は検査結果ばかり見て、私の体は診てくれない」と不満を聞くことがある。昔は、人の五感に頼って診察をしていた。顔色、脈、舌、腹など、本人の訴えを総合勘案して判断した。中国最古の薬物治療書「金匱要略」の初めに、「上工は未病を治す」とある。「上工」は名医、「未病」は病気が潜んでいるものの兆候として現われていない状態をいう。名医は身体に潜む病態を発症前に探り、治療や予防をするという意味である。現代は多くの未病を早期に発見できるようになった。医学の進歩とは、すみやかに未病を発見して治療するような、現代の上工を増やすことにあるのかもしれない。

 

2014年4月 私の漢方事始

小学一年生まで私はオネショが治らなかった。父が漢方薬を煎じてくれた。出来上がりに米あめを二個入れた。甘みはあったがおいしくなかった。子供のためにあめを入れてくれたと思っていたが、それが漢方薬の処方だった。母は胃が弱かった。果物など夜に食べすぎて、翌日胃の痛みを訴えることがよくあった。ある日、胃が重くて食欲がまったくなかった。胃がんではないかと疑った。父は漢方薬を煎じて飲ませた。大学を卒業した私は、ある漢方系製薬会社に勤めた。仕事でストレスや睡眠不足、酒が重なり体調を崩してしまった。体重が減り、胃痛でふらつき気力がおとろえた。口に周りのひげそりあとが化膿して赤く腫れあがった。漢方の勉強を始めたころだった。試行錯誤をしながら、一年後に回復した。自分の処方に自信を持った。父と同じ漢方の世界の入り口に私は立ったと思った。最近、漢方薬も身近になり、服用もしやすくなった。だが、安易な身近さではない大事な身近さになるよう、漢方の普及に努めたい。

 

2014年5月 重みと光

小さいころから「ギリシャ神話」に興味を持っている。今でもギリシャ神話に関する本を買いあさっている。大河のゆったりした流れのように連綿と続く壮大なドラマは読みごたえがある。小学四年の時、祖母からギリシャ神話集を一冊プレゼントされた。その中の「パンドラの箱」を暗唱せよと父から言われた。その時はわからなかったが、私が落ち着いて人前で話せるよう、はっきりと声が出せるようにするのが父の目的だった。人前で話をする良い体験となった。人前に立つといえば、小学五年生の学芸会で舞台に立った。大学のクラブではドイツ語劇を演じた。多くの人の前で注目を浴びる快感を覚えた。パンドラは贈り物の箱を開けてしまう。中から人間に対する、病気、戦争、しっと、災害、暴力などありとあらゆる悪が飛び出した。人の欲深さはこわいと思った。一つだけ底に残ったものがあった。「希望」だった。その「希望」が言った。「私を忘れないでください」と。形のない願いが私の心を打った。重みと光を感じた。

 

2014年6月 漢方薬と民間薬

薬草を乾燥させたものを生薬という。げんのしょうこ、せんぶり、どくだみ、はぶ茶、はとむぎは、よく知られた生薬だ。これらは民間薬である。民間薬は口伝えや個人の経験により、一種類の生薬で普通用いられる。漢方薬も生薬を用いるところから、民間薬と混同されやすい。漢方薬は数種から十数種類の生薬を組み合わせてできる。例えば、頻尿の治療薬で知られる「八味地黄丸」は八種類の生薬から成る。漢方の古典の名著「黄帝内経」「傷寒論」は二千年ほど前の中国で生まれた。病人の体力や病気の状態に応じた治療方法や考え方が書かれている。これらももとをたどれば、民間薬の研究から生まれたものであろう。経験の積み重ねで漢方の体系はできたのである。薬草の種類や薬効について述べてある最古の本草書「神農本草経」に、興味深いことが書いてある。薬を目的別に上中下の三段階に分類している。「下薬」の項に、毒が多いので長期の服用は慎む、とある。現代の化学薬品は、漢方から見れば中から下に相当すると考えられる。